「いつだったかな、ちょっと思いだせないのですが、引っ越してきたときに女性を見ました。身長は160センチぐらいで、廊下の床に派手なピンクのボストンバッグのようなカバンを置いていたと思います。ニット帽もかぶっていました。印象が違うから、別人ではないかなあ」
「30~40代の人とすれ違ったことがあります。6人ぐらい住んでいるのではないかな」
--事件当時、叫び声などは聞きませんでしたか?
「聞こえませんでした。マンションの防音がしっかりしているから、声は本当に聞こえないんですよ」
--(東城さんが)失踪したのは午後8時ごろですが
「覚えていませんね」
--警察はどういう捜査をしていましたか?
「階段とかの足跡を調べていました」
--東城さんの隣の部屋は?
「たぶん、空き室ではないでしょうか」
--こんな事件が起きたが、どう思いますか?
「ひとり暮らしなので、怖いです」
報道陣を避けようともせず、やりとりは約20分間に及んだ。時折、笑顔も浮かべながら、丁寧な言葉で答えた星島容疑者。
半面、しきりに顔をなでたり、目を泳がせたり、場違いな甲高い笑い声を上げたり…。落ち着きのない態度も目立った。
「父親と確執、殺したいぐらい」勤務先を2回早退…ビジネスバッグ押収
東京・お台場。星島容疑者が契約社員のシステムエンジニアとして働いていたオフィスビルの一室。
「大丈夫だよな? かかわってないよな」
4月21日朝、社長(39)は、東城さん失踪後初めて出勤した(19、20日は土日だった)星島容疑者の姿を見て、軽い口調で声をかけた。星島容疑者は笑みを浮かべて答えた。
「そんなわけないじゃないですか」
その言葉とは裏腹に、星島容疑者は次第に疲れた様子を見せるようになる。
「警察やマスコミがたくさんいるから眠れない」
「事件で疲れた」
仕事で使うパソコン端末の前でぐったりとうなだれることもあり、その週だけで2回も早退した。が、同僚は、誰も星島容疑者の関与を疑わなかった。
「オフィスにあるはずの星島のバッグを押収したい。捜査令状もある。星島は事件の重要参考人です」
星島容疑者の逮捕直前の5月25日夕、警視庁の捜査員は社長に電話でこう伝えた後、オフィスを訪問。星島容疑者の机の横にあったビジネスバッグや筆記用具などを押収した。
「21日に星島はビジネスバッグを持って出勤していましたか?」
星島容疑者の逮捕後、捜査員は会社関係者に問いただした。関係者は「正直、覚えていませんが、彼は普段は手ぶらで出勤していますよ。バッグを持ってくるのはまれです」と答えたという。21日朝、バッグを片手に出勤する星島容疑者の姿は、報道陣も目撃している。
会社関係の取材からは、平凡な技術者としての顔が浮かぶ星島容疑者だが、複雑な内面を露わにしたのは「父親との関係」に話が及んだときだった。
「父親が大嫌いなんですよ。殺してやりたいくらい」
現在の勤務先の採用面接で、星島容疑者はこう吐き捨てたという。
4月19日の報道陣の取材でも質問の最後に名前を尋ねると、こう明かしていた。
「名前はちょっと…。親に連絡がいってしまうから。親とはうまくいっていない」
「典型的な内向的性格」と識者…運転手にチップ、異常性欲も
「報道陣がいるのを覚悟し、“主人公”として登場しながら、途中からウソがばれないか不安でいっぱいなのだろう」
国際パフォーマンス研究所代表で日大芸術学部教授(パフォーマンス学)の佐藤綾子氏は、星島容疑者を「典型的な内向的性格」と分析する。秋田連続児童殺害事件で事件直後、報道陣に娘を捜してほしいと懇願する畠山鈴香被告の態度や表情と共通点があるという。
星島容疑者の性格がはっきり表れるのが、タクシー乗車時の言動だ。自宅近くのJR潮見駅から江東区内の勤務先までほぼ毎日タクシーを利用し、運転手に500円前後のお釣りをチップで渡すなど、「気前の良い客」として評判だった。
5、6回乗せたという運転手(61)は「一見、物静かで怖いイメージもあったが、話し始めると冗舌なのが印象的だった」。事件発覚から数日後に乗せた際は、運転手が「不思議ですよね」と事件を話題にすると、星島容疑者はこう答えていた。
「私、そのマンションに住んでいるんです。警察に押し入れから天井裏まで見られましたよ」
佐藤氏はこう見る。
「ひとりになりたくて、お金を使ってでもタクシーに乗る。内向的性格の人は限られた範囲の人、彼の場合、タクシー運転手に必要以上に気に入られたいから、チップを渡していたのだろう」
星島容疑者は従業員約20人のコンピューター開発会社の契約社員だったのに、運転手に「大手金融機関系列の社員」を装うこともあったという。
「この場合も、内向的な性格の人が、日常生活で満たされない自己顕示欲を表現した形」(佐藤氏)
一方、犯罪心理学者の作田明氏は「情報を持っているマスコミから、捜査の進展状況や自分が疑われていないか、様子を探りたかったのでは」とみる。犯人と知らずに質問する報道陣への優越感を抱いていた可能性もあるという。
なぜ、東城さんを狙ったのか。「若い女性に関心があるのに、普通に交際ができない。ときどき見掛ける女性にひかれ、同じフロアだから、2人の間がうまくいくと思い込んだのでは」と作田氏。東城さんに騒がれ、引っ込みがつかずに殺害、証拠隠滅のために遺体を解体したと推測する。
佐藤氏は、星島容疑者が玄関越しに東城さんの帰宅を待ち伏せした点に注目する。
「異常な性的欲求があり、どんな女性でも良かったはず。ストーカーと違い、相手と距離を置いて『ひとり暮らしか』『いつ帰宅するか』などを観察し、タイミングを計っていたのではないか」