幸四郎&染五郎
大盛況で来年10月第2弾
中日新聞 2008年11月19日 紙面から
松本幸四郎(66)が明智小五郎にふんした
乱歩歌舞伎
江戸宵闇妖鉤爪
(えどのやみあやしのかぎづめ)
東京・国立劇場
が大盛況で、来年にも第2弾を上演することが18日までに決まった。
意欲的な新作が観客の支持を得ての盛り上がり。幸四郎がかねて口にしてきた「演劇としての歌舞伎」が実現したかっこうだ。
3日から上演中の作品は、日本の推理小説の先駆けとして知られる江戸川乱歩の「人間豹」が原作。昭和9年から10年にかけて月刊誌に発表された小説で、時代を幕末に置き換え、乱歩作品を初めて歌舞伎化した。
市川染五郎(35)が2役早変わりで人間豹にふんして宙乗りを見せるなど、わかりやすく変化に富んだ内容。ケレン味にたよらず、原作を生かしながら歌舞伎の様式美を取り入れた仕上がりが客足につながった。同劇場によると先週末の15、16日には満員御礼となり、平日も尻上がりに当日券が伸びている。「普段歌舞伎を見慣れている方とは明らかに違う層の方が多い」と観客開拓にもつながった。
名探偵明智にふんした幸四郎は、「九代琴松」の名で演出も手掛けただけに、素直に喜ぶ。「まず歌舞伎の脚本になっていないといけないと思った。あとは歌舞伎にならないところを切り捨てて、残ったのがシュールという一点。この2点が形になった結果、新しくお芝居を見て下さる方が出てきた」。歌舞伎を特別な古典芸能ではなく、現代劇と並べて見られてこその舞台芸術との持論を持つ幸四郎は、実践できた手応えがひとしおうれしいようだ。
反響を踏まえ劇場と松竹側が、来年10月の幸四郎・染五郎共演の新作舞台を早々決定。国立劇場で、再び乱歩作品になるのか今後煮詰めるが、今回の企画発案者の染五郎は、「(人間豹が)また会おうというセリフがあるので、ボクとしては人間豹の“その後”ができれば」と意欲の弁。26日の千秋楽まで、「乱歩の世界をすべて出し切るつもり」と力強く話した。
◆記者の目
東京・池袋の立教大学の敷地内にある旧江戸川乱歩邸で撮影された公演の宣伝用写真。レトロファッション風スーツに身を包んだ幸四郎・染五郎は、何やら怪奇なものと対峙(たいじ)するただならぬ雰囲気をかもしだしていた。歌舞伎公演としては異例のチラシが、メディアを含め一般の関心を誘った。
時代設定を幕末に置き換えたことに、疑問を投げかける批評も一部にある。が、染五郎が着想してから10年。思い付きを舞台にしたわけではない。テレビ番組で、企画の意図などについて語った後、たちまち数百件の問い合わせが劇場に殺到したという。世界の中でも有数のエンターテインメント都市と言われる東京で、観客側がいかに見るべきモノに飢えているかを示す例ともいえるだろう。
さまざまな手法を駆使して“おもしろおかしい見せ物”にすることも可能だったが、実際の舞台は、むしろ抑え気味だ。歌舞伎という底知れない森へ、人々を誘い込もうという意図もあって、物語の実を重視した結果である。60年以上もこの道を歩んできた幸四郎と染五郎の若い力が、実を結んだ実験。新しい酒を熟成させる作業が望まれる。 (本庄雅之)
(^_^;) 見たい!
