国家崩壊 アイスランド

| | トラックバック(0)

「世紀のツナミ」責任取れ

アイスランド崩壊懸念で国民デモ

     11月14日8時3分配信 フジサンケイ ビジネスアイ


 ■マネーに溺れた“金融立国”

 FRB(米連邦準備制度理事会)のグリーンスパン前議長が「世紀のツナミ」と表現した金融危機に直撃された世界最北の島国アイスランド。国内大手3行の借金はGDP(国内総生産)の10倍以上にのぼる。自国通貨は暴落。加えて高金利、インフレ、失業…。暫定合意したIMF(国際通貨基金)からの緊急融資も難航し約32万人の国民は、政府や中央銀行への怒りを爆発させていた。

 (レイキャビク 木村正人)

                   ◇

 「辞めろ!」。1日、首都レイキャビクの目抜き通り。3000人がオッドソン中央銀行総裁(議長)とハーデ首相の辞任を求めデモ行進した。オッドソン総裁の人形が“絞首刑”にされ、ブタの鼻をつけたハーデ首相のパロディー写真をプリントしたTシャツが掲げられた。コンピューターエンジニアのバアルソンさん(52)は「国民がこれだけ集まって抗議するのは前代未聞だ。私たちは銀行がこんなに肥大化しているとは知らなかった」と怒りをあらわにした。

 大手3行の莫大(ばくだい)な借金で金融システムのみならず、国そのものが吹き飛びかねない危機に直面していることを国民が知ったのは10月6日の深夜だった。全行を国有化する法律の成立を受け、ハーデ首相がテレビで「最悪の場合、国家が崩壊する恐れすらある」と明らかにした。

 日本円に換算するとアイスランドの名目GDPは昨年推定で約2兆円、今年の国家予算は約2800億円だ。国有化された大手3行の借金は20兆円にのぼり、通貨クローナの暴落で実質的な返済額は2倍に膨れ上がったとみられている。

 今後の経済予測も深刻だ。経済規模は最大10%縮小し、1%台だった失業率は金融、建設などを中心に8%に、インフレ率は20%に達する。人間にたとえれば心臓と血管にあたる金融機関が機能を失えば、その国の経済は死滅しかねない。国が支えようにも、国も、通貨の影響力もあまりに小さすぎた。ハーデ首相の「国家崩壊」の意味もここにある。

 “絞首刑”にされたオッドソン総裁は2005年、3人いる中央銀行総裁の議長になった。ハーデ首相と同じ与党・独立党を牛耳る政界の実力者。アイスランドは1970~80年代、基幹産業といえば漁業しかない欧州の最貧国。オッドソン氏は90年代から経済開放政策を積極的に進め、資本移動の自由化、銀行の民営化、クローナの変動相場への移行と“金融立国”を目指した立役者である。

 先端技術にも力を入れたが、北海道よりやや広い国土しか持たず、資源といえば海産物、水力・地熱発電しかないアイスランドにとって、欧州の金融立国として発展を遂げている小国、スイスやルクセンブルクがお手本になった。

                   ◇

 ■「わが世の春」終焉

 金融緩和が経済成長のエンジンとなり、国民1人当たりのGDP(国内総生産)は日本を上回って世界トップ水準。昨年、国連開発計画の国民の生活レベルの指標「人間開発指数」で世界1になるなど、つい最近までわが世の春を謳歌(おうか)していた。

 顧客から預金を集めて貸し付ける従来の商業銀行が「草食動物」なら、資金の多くを市場で調達する米投資銀行は「肉食動物」にたとえられる。

 アイスランド大手3行は2000年以降、米投資銀行モデルへの傾斜を強めた。活動資金の6割を社債発行で市場から調達。残る4割は預金だ。手堅い銀行の場合、資金の市場調達率は5割程度といわれる。アイスランドの政策金利は06年2月以降、国内経済の過熱を抑えるため10%を超えた。米国の超金融緩和と日本の超低金利が世界的な金余り現象を生み出していたため、アイスランドの高金利は格好の投資対象となった。

 同国の大手3行は自国の企業家と組み、低金利の英大手銀バークレイズなどからカネを借りては英大企業やロンドンの高級ブティックを買いあさった。アイスランド国民も銀行に勧められ低金利の外貨建てローンを組み、住宅やトヨタの高級4輪駆動車などを購入。政府も頭金なしで住宅ローンが組めるよう法改正したため、国内インフレを抑制できなくなった。

 昨年夏、サブプライムローン問題で、金融市場への資金供給が細る信用収縮が始まると、貸し倒れを保証する金融機関間の信用力保険「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS」市場で同国大手3行に対する保険料は急上昇を始めた。最初の“危険信号”だった。

 一部の中央銀行は警戒を強めたが、同大手3行はサブプライム関連の証券化商品は扱っていなかったとされ、格付け会社の評価は最高のトリプルAのまま。マネーゲームの宴会は続き、悪酔いはさらに深まった。オッドソン総裁の経済顧問だったアイスランド大のハラルドソン教授は「同総裁はわが国を代表するカリスマ政治家だが、中銀総裁として役目を果たしたかといえば別の話」という。04年に銀行の肥大化に懸念を抱いたが、大手3行の国有化という「金融機関の完全崩壊」は想定できなかった。そして、「事態を決定的に悪くしたのは『緊急対策は必要ない』と自信を見せていたハーデ首相が数日後、突如として全銀行国有化法を導入したことだ。国民はパニックに陥り、海外の銀行は取引を停止した」と振り返った。

 同教授によると、中央銀行は、大手3行の対外債務が膨れあがるのに合わせて、外貨準備高を積み増す必要があったという。同国の外貨準備高は28億ドル(2700億円)で、ケニアやガーナよりも少なかった。

 アイスランドは先月24日、IMF(国際通貨基金)との間で21億ドルの緊急融資を受けることで暫定的に合意した。だが、英国内の預金者保護をめぐり英政府が反テロ法を使ってアイスランドの銀行の英国内資産を差し押さえたため、今月上旬に予定されていたIMFの承認は難航している。これに対し同27日、アイスランドの最大手銀カウプシングが日本で発行した円建て外債(サムライ債)500億円が債務不履行になった。国民保護のため、なりふり構わず真っ先にカネを差し押さえた英政府と、借金を踏み倒れても鷹揚な日本政府の対応の違いが浮き彫りになった。

                   ◇

 ■中銀総裁「不可抗力」

 アイスランド中央銀行総裁の一人、フリドリクソン氏に「日本が貸した金は返してもらえるのか」と質問すると「コメントできない」とにべもなかった。破綻が回避できたかどうかについても「今年前半、わが国と銀行に対する評価はトリプルAだった。それが9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻で状況は一転した。外貨準備高もECB(欧州中央銀行)の基準に合わせていた」と不可抗力を強調した。

 リーマン・ショックは世界に飛び火。欧州では各銀行が短期や長期の資金を融通し合う銀行間取引市場が完全にストップし、アイスランドの銀行は資金調達ができなくなった。高金利につられて集まった預金者の逃げ足も速かった。100年超の歴史を誇る金融立国スイスも金融危機の荒波に襲われているが、伝統的な銀行の秘密主義への信頼は揺るがず、富裕層の預金はどっしり腰を据えている。

 1年前に比べ対ユーロで5割も暴落したクローナを防衛するため、政策金利は12%から18%に引き上げられた。クローナが下落し銀行の対外債務が膨らむのを避けるための措置だが、景気後退に拍車をかけるのは間違いない。

 国内2位のランズバンキ銀行が国有化された先月上旬、上司から「君は必要なくなった」と解雇を通告されたホクソン氏(38)。退職から3カ月間は給与が支給され、9カ月間は失業保険も受け取れる。外貨建て住宅ローンは政府の救済策として1年間凍結される見通しだ。9年前に就職したとき、900人だった行員は2770人に増え、海外取引を扱う職場では1日12~18時間勤務も珍しくなかった。「ついこの間まで順調だった。次の仕事は海外で探すしかない」と肩を落とす。銀行金融従業員同盟によると、行員全体の20%に当たる1000人が解雇された。

 4年前にマネーゲームの危険性を指摘する告発本を書いたドキュメンタリー作家のラグナソンさんは「アイスランドは狩猟社会だ。魚を見つけては魚を捕り、鳥を見つけては鳥を撃ち落としてきた。その後に何が起きるかなんて考えてこなかった」と話した。

                   ◇

【用語解説】アイスランド

 北極圏に接する世界最北の島国。首都レイキャビク。北海道と四国を合わせた程度の面積(約10万平方キロ)に約32万人が住む。主な民族はノルウェー系アイスランド人。アイスランド語が公用語だが、初等・中等教育で、英語やデンマーク語も習う。火山島であり、地熱発電が行われている。近海は世界有数の漁場で、水産業が主な産業。伝統的な捕鯨文化も残る。NATO(北大西洋条約機構)に加盟しているが、自国の軍備を持たない。金融業が発達しており、2006年には1人当たりGDP(国内総生産)が5万580ドルと世界でもトップレベルとなった。
 
 

((((;゚д゚))))  経済基盤の弱い国には 厳しい時代だ

 

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 国家崩壊 アイスランド

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://itainews.com/mtos/mt-tb.cgi/1254